2012年1月4日水曜日

第27音 えびの高原の野生鹿

2011年11月14日、冬の寒空の広がる中、我々は九州南部に広がる霧島山系の北部に位置する、標高1200mの宮崎県えびの高原にやってきた。

そう、音集め最難関のひとつと思われる、「野生鹿のいななき」を集めに来たのだった。

音風景はいくつかの種類に分けられる。あくまで己分類だが、人の営為が起こす「文化系」、日常生活から建造物まで我々を幅広くとりまくものから起こる「環境系」など。そのなかで、もっとも音集めが難しいと思われるのが、「自然系・野生動物編」だ。

「自然系・野生動物編」は、いつその音が聴けるかどうか分からないため、大変に難しい。長いときは一日以上時間をかけなければその音を聴く事ができないのだ。

今回の音風景を集めるにあたって、我々はそれなりに覚悟していた。なぜなら、相手は野生の鹿であるから、いつ鳴くか、またどこまで行けば聴けるのか、全く分からないからである。しかも季節は冬、そして今回の舞台は高原である。寒さも相当厳しいと思われた。我々は何泊かして、明け方に多いとされるいななきまで一睡もせず、まんじりとその鳴き声を集めるまで待つくらいの心持ちであった。



我々は鹿児島方面からえびの高原にはいった。着いたのは夕方五時前。早速周辺に聞き込み調査を開始する。手始めに、駐車場の管理人のおじさんに話を聞いてみる。

風夫妻「僕たち、野生の鹿のいななきを聴きにきたんですけど」
管理人のおじさん「あー、あれねえ、さっきも鳴いてたよ」
風夫妻「へ?このあたりで聴けるんですか?」
管理人のおじさん「うん、この辺ならどこでも聴けるよ」

あまりにもあっけない回答に逆にがっかりしてしまった。。。


というわけで、我々は車を止め、その辺りを散策することにした。すると、遠く山麓の向こうから、「キーン」という高い声が・・・これだ!!

というわけで、お聴き下さい。
日本音風景100選のひとつ、「えびの高原の野生鹿」であります。
(風の音と、風の声がうるさいので、音量注意!!)



(頻繁に鳴いているのですが音が遠いため聴こえにくいです。43秒あたりと、2分9秒あたりで聴こえます)



せっかくなので、我々はえびの高原で一泊することにし、高原に沈む夕日を眺めながら、宵闇に穿たれた月を愛でて、晩酌を楽しみ、就寝した。



朝、一番の寒さを感じながら起床し外に出ると、その冬はじめての霜が降りていた。11月に入ったばかりだが、標高1200メートルは流石に寒い!!



せっかくなので、朝焼けの中、えびの高原をトレッキングすることに。



トレッキングとは言っても、当時妊娠六ヶ月の妊婦も一緒なので、軽いコースを選択した。


舗装されていて、歩きやすい。
朝日の差す樹林の中をのんびり歩いて行くと、向こうに何かの気配が!
みると、なんと野生の鹿さんたちが団らんしていた!

せっかくなので、その様子を動画でご覧下さい。



この後も、なんども鹿さんたちとすれ違った。

また、えびの高原には大小合わせて三つの湖があり、そのどれもに朝日が映えて美しい。




妊婦にもさほど辛くなく、朝の散歩にはほどよい程度だった。


音も集めたし、散歩も気持ちが良いしで、すっきりした気分でえびの高原を後にすると、路上まで野生の子鹿さんがお見送りに来てくれた。




じゃあねー、と挨拶して、今回の音風景はこれにて終了。




[音風景データ]
「えびの高原の野生鹿」
採取した日:2011年11月14日
場所:宮崎県えびの市(えびの高原)
採取難度:★★★☆☆

聴き方:秋から冬にかけて、えびの高原にいけば聴ける。明け方がいちばん良いらしいが、基本的にはいつでも聴けるようだ。


[周辺]
■えびの高原
トレッキングが楽しい。運が良ければ、鹿に会える。高原にある駐車場は有料。

■白鳥温泉上湯
300円。露天風呂からえびの市が一望でき、素晴らしい眺め。お湯も少し温いが、まずまず。内湯も充実している。従業員の方々がとてもやさしい。